「いらない人がいて、欲しい人がいるはずなのに、なぜ繋がらないんだろう」
——そんな問いから生まれた、新潟市のあたたかい場所を訪ねました。
大崎 佳子さん 大湊 優貴さん
つなぐマーケット共同代表
「誰かのいらないものが、誰かの必要なものになる。」
お互いを尊重しながら、一緒にこの場をつくっています。
新潟市江南区・秋葉区を中心に活動中。
安心の居場所
子ども用品を無料で交換し合う「つなぐマーケット」を訪ねました。
この日は秋葉区での開催。
会場までのエレベーターで一緒になった親子は、江南区開催の常連さんでした。
「子どもたちはいつもヒーローベルト目当てに来ているんです。」と帰り際に佳子さんにお話していたのが印象的でした。

筆者が初めてお邪魔して感じたこと。
“静かに包み込んでくれるような受け入れる姿勢”
それは、積極的に関わっていって巻き込むようなものでもなく、
無機質でシステム化されたやりとりでもなく、
ただそこにいるだけで、その空間の一部になれるようなあたたかい感覚でした。

ホワイトボードに人数を書き、お部屋に入ると「こんにちはー」と笑顔で迎えてくれる居場所。
「今日はこんなの持ってきたんです。」
「わー、ありがとうございます!」
そんな会話から笑顔が伝染していく。




ママたちがここに集まってくるのは、ここが安心の居場所だから。
そして共有できるあたたかい想いであふれているから。
「何か月ですか?」


きれいに畳まれた洋服。
誰かの思い出がつまったおもちゃ。
そんな品々を1つ1つ大切に手に取って「うちの子に合うかな」と吟味しているうちに、
スタッフや隣のママたちと自然に会話が始まります。
「何か月ですか?」
——子育て中によくある会話のきっかけ。
それが不思議と心地良い。
思い起こすと、筆者はまだ我が子が幼かった頃、支援センターなどで少し緊張しながらこの一言を使っていました。
でも、ここでのそれはガードがゆるくてボーダーがない。
これが佳子さん・優貴さん・スタッフみなさんのつくる場のチカラだと感じました。
無条件に許してもらっている感覚。
「いいんだよ」の気持ち。
「お茶飲んでいってくださいね!」
「来てくれてありがとう!」
「かわいいね!」
全部の言葉が自然と心に入ってくる。
それは二人が同じ母親で、色々な想いを持ってこの居場所を守ってきた事実があるから。
いつもの笑顔に、自然と心を開いてしまうんだと思います。


「物を探しています」——その一言から始まった、二人の原点
2022年12月、2人のママによって立ち上げられたこの活動は、モノを繋ぐだけでなく、孤独を感じやすい子育て中のママたちの居場所にもなっています。
共同代表大崎佳子さんと大湊優貴さんに、活動への想いをお聞きしました。
ーー まずお二人の出逢いは?
一人で声を上げたことからスタートした佳子さんは、夫の転勤で山間部に住んでいた時の経験が大きなきっかけだったと語ります。
でも新潟では、どこに行って誰と話せばいいんだろうって。
その人間関係の繋がりのなさっていうのと、モノの繋がりのなさが都市部ではあるんだなと思いました。
ーー なるほど。その経験が、“つなぐマーケット”を始めようと思ったきっかけになったんですか?
同じ想いを他のママにさせたくないなとか、 この一枚のベビー服を買わなくてもよかったら、ママたちはもうちょっと自分のことにお金を使えるのにとか、 あとお下がりを着ることで、「汚してもいいか」とおおらかに過ごせるんじゃないかなって。
ーー なるほど。ご自身の経験から・・・

優貴さんは環境への配慮が大きな動機だと話します。
ファストファッションも、貧困国の人たちが搾取されて、大量に作ったものが大量に捨てられて。末端の私たちも加担しているなと思っていました。
ーー 地球を守りたいという気持ちの原体験は?
食べ物も着るものも、いろんなものを自分ごととして落とし込んだ時に、一人一人が変われば世界が変わっていくのかなって思っています。
あとはやっぱりママたちの繋がりがないなって子育てしていて思ったりとか、そういう部分で「物と人を繋げたい」という想いがありました。

物を大切に使い回すことで、環境負荷を減らしたいという考えが軸となっているとのことでした。
繋がらないのは、何でなんだろう
子育てをしている家庭が新生児を迎えて一番に揃えるベビーバス、そのベビーバスに浮かべる温度計、あらゆるものを家庭ごとに一式揃えています。
いらない人がいて、欲しい人がいるはずなのに、繋がらないのは何でなんだろうって感じていました。
ママ同士の繋がりについて考えると、筆者は生まれも育ちもずっと新潟市のため、周りには幼馴染や大人になってからの友人がいます。お下がりも順番に回してもらってきました。
でもこれはもともとの繋がりがあるから。地域外から来たママたちは、その繋がりがそもそもない、そのことに、今回改めて気づきました。
立ち上げ当時、こんなことを感じていたといいます。
「そのような想いをさせたくない。」
佳子さんはそれが原動力だと話してくれました。
近所のママと繋がっていること、ちょっと聞きたいなと思ったときに話ができる繋がりがあること、そんな繋がりを作りたいと教えてくださいました。
生活保護をもらうとかではなく、もう一つの手前の安心感みたいなものがあったら、もうちょっと子育てが楽になるのかなって思うんです。
子ども用品の譲渡会・交換会は、そんな”もう一つ手前の安心感”への入り口。
別に誰かと話さなくてもいい。
欲しいものをもらって帰るだけでもいい。
気づいたらスタッフと話が弾んで、そのまま常連さんになっていく人もいるといいます。
「ママたちの一つの居場所としての選択肢であってほしい。」
モノが巡り、人が繋がる。
その小さな循環の中に、お二人の静かで確かな願いがありました。
【編集後記】
筆者も今回いくつかの衣類を持って行きました。
取材が終わり帰る頃には、その衣類がなくなっていて、誰かの手に渡ったことが分かり、嫁に出したような少し寂しい気持ちと、次の人が使ってくれるという嬉しい気持ちになりました。
次の人が大切に使ってくれると思うと、それだけで心が満たされるんだなと、発見でした。
また、例えば子ども服、ズボンのゴムを入れ替えてあげたり、シミになっているところにワッペンをつけたり、次に使ってもらうことを考えての一工夫をしているとお聞きして、さらに感激でした。これは、スタッフの方がやっているだけでなく、持ってきてくれる方もそうしてくれているとか。
お茶飲みコーナーでも、多くの常連さんが、マイカップを持参していて、佳子さん、優貴さんお二人の想いが本当に多くの方に広がって、循環の輪が確実に大きくなっていることを実感しました。
お二人からよく出てくる「繋がる」という言葉。
モノが巡ること。
もう1つの視点、人と繋がる安心感。
この“循環”に、本気で向き合い活動されている姿に筆者は共感し、感動しました。
また遊びに行きたいです!
つなぐマーケット
非営利団体
「誰かのいらないものが、誰かの必要なものになる。」
お金を介さず子ども用品をゆずり合う、みんなの共有地。
参加者もスタッフも、関わる全員がフラットな仲間です。
モノが巡るうちに、人と人もつながっていく。
参加費無料。ゆずるだけ・もらうだけでもOK。
参加のしかた
持ち込み▶ 貰った相手の喜ぶ顔が想像できるものを
持ち帰り▶ 今必要なものを、大切にできる分だけ
※転売はご遠慮ください。
●新潟市江南区・秋葉区を中心に活動(出張開催あり)
●次回の開催場所・日程はInstagram(@tunagu_market)でご確認ください。


