はなえむのもり

全天候型ってこういうこと!
“まる・さんかく・しかく”がつくる、長岡のひだまり広がる“公園”にお邪魔してきました。

施設代表 小倉さん

施設代表 小倉さん

施設長 / 保育士

■園×円×縁 三つの“えん”がつながる場所

 

長岡市の“子育ての駅”は、「雨や雪の日でも子どもたちがのびのび遊べる場所がほしい」という市民の声から生まれた、全天候型の公園です。
市のニーズ調査では、育児に不安を抱える保護者の増加や、子育て相談・親同士の交流の場を求める声が多く寄せられました。
そうした声を受けて、平成21年5月5日、保育士が常駐する長岡オリジナルの公園「子育ての駅 千秋てくてく」が誕生しました。

 

ーー “てくてく”という愛称は市民投票で決まったそうですね!

小倉さん
小倉さん
「広い公園を親子や友だちみんなでてくてく歩いて素敵な時間を過ごしてほしい」という願いが込められています。

 

16年目を迎えた“てくてく”の特徴を教えていただきました。
入口を入ると受付があり、正面には「さんかく」と呼ばれる交流サロンがあります。
机と椅子、子ども用の椅子もたくさん用意されていて、ガラス張りの空間からは緑豊かな公園の景色が眺められます。
まるでカフェのような雰囲気の中で、離乳食やおやつを食べる親子の姿も見られました。

 

外の公園には季節の花や遊具、水場もあり、晴れの日にはお散歩も楽しめます。

筆者は、てくてくの案内マップの下に小さく書かれた
「園(公園)の中の円(各コーナー)で縁(友だちの輪・親子のふれあい)が広がりますように。」
という一文に目を留めました。

設立当初からこのプロジェクトに関わった方々の想いが、建物や公園のかたちに表れていることが伝わり、改めて素敵な空間だと感じました。

 

 

 

■ふれあいと発見が広がる、まる・しかくの世界

 

受付を背にして右側が、遊びの広場「まる」。
「まる」は、円形の中庭を中心にぐるりと回遊できるつくりになっていて、中庭から差し込む光があふれる、ひだまりのような空間です。
あかちゃんコーナーやえほんコーナー、授乳室なども区分けされており、小さな子どもでも安心して遊べる工夫がされています。
授乳室は、搾乳のために大人だけでも入れるよう配慮されていました。

 

ちょうど取材中に歌が流れ始め、先生による「なかよしタイム」がスタート。
子どもたちはワクワクした様子で見守りながら、歌に合わせて親子でふれあい遊びを楽しんでいました。

 

 

受付を背にして左側が、運動広場「しかく」。

ーー 今まで取材させていただいた「ぐんぐん」や「ちびっこ広場」と比べて、一番“公園っぽい”と感じます。

小倉さん
小倉さん
この屋根付きの公園は、外の南公園の延長として、あえて同じような環境で設計されているんです。

ーー まさに“公園”なんですね!

小倉さん
小倉さん
屋根と壁があることで、冬でも雨の日でも公園として遊べるようになっています。ダイナミックに遊んでもらえると思います。

ガラス張りの室内には高い天井が広がり、大きな滑り台のある遊具やマットが設置されていて、子どもたちがのびのびと動き回れる空間になっていました。

 

 

■つながりと安心がそろう親子にやさしい居場所

ーー “てくてく”で大切にしていることは?

小倉さん
小倉さん
子育て世代の親同士はもちろん、家族と地域の人、外国籍の方など、さまざまな人とのつながりがここで生まれることを大事にしています。
子ども同士の遊びや、ちょっとした声かけから自然に会話が始まり、親同士の関係も広がっていくんです。
赤ちゃんコーナーでは、私が「何ヶ月ですか?」と声をかけることで、月齢の近い親同士が話し始めるきっかけになることもあります。

取材日は、おもちゃ病院の開院日。
サポーターの皆さんが真剣な表情でおもちゃの修理に取り組まれていました。

小倉さん
小倉さん
皆さん、ボランティアなんですよ。無償で直してくださって、部品も手作りしたりして…本当に治ってしまうんです!
世代や分野を超えたさまざまな人との出会いや交流、ふれあいを通じて、地域の文化や歴史を活かした多世代交流が生まれています。

長岡市の子育ての駅では、サポーター制を導入し、ボランティアとして協力してくださる方がたくさんいらっしゃるそうです。
竹細工のおもちゃづくりを教えてくれるイベント、ピアノと歌・読み聞かせ・イベント時の見守りなど、学生からご年配の方まで、幅広い世代のサポーターが運営の大きな支えとなり、地域ぐるみの交流を育んでいます。

一方で、花壇でサツマイモを育てて芋ほりイベントの開催や、助産師や歯科衛生士など専門家による相談会、ヨガやダンスなど、親子で楽しめて安心できる企画も毎月継続的に実施されています。
これらは、歴代の先生方が丁寧に積み重ねてきた取り組みであり、地域の子育て家庭にとって「いつ行っても、誰にでも相談できる」安心感につながっています。

サポーターとともに築かれてきた地域とのつながり、そして先生方による継続的な運営体制。
この2つの柱が、“てくてく”という場所に、あたたかくて確かな土台をつくっているのだと感じました。

 

 

■しゃべらなくたっていい

 

“てくてく”に限らず、子育ての駅は、住まいや年齢、国籍に関係なく、どなたでも利用できるそうです。

利用時間は、朝9時から夕方18時まで。

小倉さん
小倉さん
安心できる場所として、誰かとつながれる場所として、つながりが生まれるきっかけになる場所として、利用してもらえたら嬉しいです。

ーー 筆者自身、第一子を連れてこうした施設を初めて利用する際には、最初の一歩を踏み出すのに勇気がいりました。

小倉さん
小倉さん
分かります。来たからといって、誰かと交流したいわけじゃない方もいると思います。

別にしゃべらなくたっていいんです。

ここにいて、“人を感じる”っていうのかな。

「あの人も同じくらいの子がいるな、一緒だな」って。

頑張ろうと思わなくたっていいんです。

ーー そう言ってもらえると、最初の一歩が踏み出せます。私も当時、「ママ友って作らなきゃいけないのかな」と思っていました。

小倉さん
小倉さん
その場のお付き合いだっていいんですよ!

それに、ここの特徴としては、多世代のいろいろな方がいる中で、

「遊びは学び」って思うんですけど、子どもだけでなく、大人も一緒に学ぶことがたくさんあります。

それぞれ背景も違って、価値観も倫理観も違う中で、「みんな違ってみんないい」って、本当にその通りで。

相手が自分と違うことに気づいて、「じゃあどうしようか」と考えることで、学びが生まれるんです。

ーー 学びというと、先生の手遊びひとつでも、家で真似して親子で楽しめますよね。

小倉さん
小倉さん
月齢や年齢が違う親子を見ることで、自分の子の将来の見通しもついたりします。

「小学生になったら、こんなに動けるようになるんだな〜」とか。

ーー では最後に、この記事を読んでいる子育て中の皆さまへ、メッセージをお願いします。

小倉さん
小倉さん
自分を大切にすることを忘れないでください。

あなたは一人じゃないです。

いつでも遊びにきてください!

 

 

 

【編集後記】

(小倉さんからのちょっとしたアドバイス)
“てくてく”には、子どもたちの心をぐっと引きつける何かがあるようで、帰り際に「帰りたくないー!」と全力で抵抗する姿もよく見られるそうです。
そんなときは、どうぞ遠慮なくスタッフに「ヘルプお願いします…!」と声をかけてくださいとのこと。
子どもたちの気持ちに寄り添いながら、すっと帰れるようにそっと背中を押してくれますよ。
それも、“てくてく”の魅力のひとつです。

 

小倉さんの「別にしゃべらなくたっていいんです」の一言、

筆者はこの言葉に心がふるえました。

隔離されている子育ての時間の中で、その場にいること。

そして、他者を感じること。

それだけで、「交流」になり救われる気持ちがあるということを教えていただき、目から鱗でした!!

先生方のあたたかな気持ちと、地域の方のサポート、公園としての魅力、すべてがつまったかけがえのない“てくてく”だと感じました!

 

 

 

子育ての駅 てくてく(長岡市千秋)

てくてくは、みんなが自由に遊べる公園と子育ての駅がひとつになった全国初の施設です。
おとうさん、おかあさん、子どもたち、みーんな笑顔で楽しめる、輪が広がる場所です。
緑いっぱいの2万平方メートルの公園の中には、雨の日でも、雪の日でも、のびのび遊べる屋根付き広場があります。みんなの遊び場、交流の場としてぜひご利用ください。

 

【所在地】新潟県長岡市千秋1丁目99番地6

【連絡先】0258-21-3860

【利用時間】午前9時~午後6時

【休館日】毎週水曜日(水曜日が祝日の場合は開館)、年末年始

【駐車場】無料(100台)

 

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