はなえむのもり

新発田市本町にある「産前産後ケア ゆりかご」。
お母さんと赤ちゃんのための、やさしい居場所を訪れました。

鈴木 京子さん

鈴木 京子さん (すずき きょうこ)

■プロフェッショナルなチーム

「ゆりかご」は、フードバンクしばたが2024年5月にスタートした、産前産後のお母さんと1歳未満の赤ちゃんを対象としたケア施設です。
運営を支えるのは、助産師7人、看護師5人、保育士、栄養士、そして料理が得意な方など、子育て経験を持つ22名のプロフェッショナルたち。
「それぞれの能力を自由に発揮している」という言葉からは、スタッフ同士のリスペクトと信頼がにじみ出ていました。
玄関やお部屋には季節の花が飾られ、昼食は栄養バランスを考えた手作りの献立。朝の登館時には、赤ちゃんを抱えて荷物を持つお母さんの元へ、スタッフが車まで迎えに行くことも。ひとつひとつの心配りが、親子にそっと寄り添います。

(育児のことなど気軽に相談できます)

 

■まるで実家!!

利用中のママからは「もっと早く知っていたら、1人目のときから利用したかった!」との声も。
まずはその利用方法をご紹介します。

【利用案内】

  • 事前予約制(電話予約)
  • 利用時間:10:00~15:00
  • 利用無料・昼食・おやつ付き
  • 食事時にはスタッフが赤ちゃんを預かってくれるため、あたたかいご飯をゆっくり味わえます。
  •  赤ちゃんの離乳食は各自持参。電子レンジでの温めも可能です。

     

「ゆりかご」は産前産後ケア施設ですが、医療機関のようなかしこまった雰囲気ではなく、助産院や地域の子育て支援施設のような、あたたかく包み込むような空気感が印象的です。
特に印象に残ったのは、浴室と寝室が用意されていること。
新設のユニットバスには脱衣所に沐浴台もあります。新生児期を過ぎた赤ちゃんと一緒にお風呂に入る場合、お母さんが先に入浴し、ブザーでスタッフを呼ぶと赤ちゃんを連れてきてくれます。洗い終えたら再度呼び出せば、赤ちゃんを預かってくれるという流れでの利用も多数とのことでした。
これぞ“実家システム”!
ワンオペでの入浴に悩むご家庭にとって、本当にありがたいサポートです。
寝室は個室でベッド付き。夜泣きで眠れない日が続いたお母さんも、赤ちゃんを預けてゆっくり休むことができます。

 

(スタッフの声掛けに赤ちゃんもにこにこ😊)

 

(赤ちゃんの生活時間に合わせて過ごすことができます)

 

 

■本当につらいとき

自治体の産前産後ケアを利用する際は事前予約が必要です。「ゆりかご」も事前予約制ではありますが、「本当につらい」という緊急時の受け入れも対応しています。
不安や孤独感、睡眠不足、マタニティブルー・・・そんな声が届いた時は、「すぐにおいで」と応えるそうです。
スタッフ全員で丁寧に迎え入れ、美味しい食事をゆっくり食べてもらう。そうすると顔色が良くなり、元気を取り戻して帰っていかれる姿も多いとか。

鈴木さん
鈴木さん
食べ物って不思議なんです。
口から入って、ちゃんと生きる力になっていくんです。

産後の不調はホルモンの影響と分かっていても、当事者はどうにもできないことが多いもの。そんな時に「ここに来ていいよ」と言ってくれる存在がいること、それだけで救われるのです。

また、産前産後ケアでの緊急の受け入れをやっている施設は、筆者の知る限り数少ないと思います。

「ゆりかご」のスタッフ皆さんの“いのちを守る”という覚悟を感じました。

 

 

■心のお守り

「ゆりかご」では、1歳の誕生日を迎えると卒業となり、ささやかな誕生会が開かれます。
取材日にお祝いされたNちゃんも、利用者さんやスタッフに囲まれながら、あたたかい時間を過ごしていました。

誕生会が始まります。

他のお友達もお祝いに集まります。

 

♪げんこつやまのたぬきさん

おっぱい飲んでねんねして♪

 

手遊びを楽しみます。

 
 

スタッフから素敵なメッセージとプレゼントが手渡されます。

皆でハッピーバースデーと歌ってお祝いです。

 

親子は、この1年、きっとたくさんの“はじめて”を経験してきたことでしょう。

その貴重なひとつひとつを、このゆりかごで一緒に喜び、励まし、支え、背中を押してきたことが伺えました。

会の最後に、鈴木さんが親子にメッセージを送ります。
「この携帯ね、何かあったらいつでも電話して大丈夫だからね。」と、エプロンのポケットからゆりかご専用携帯電話を取り出して優しく声を掛けました。


そのママは1歳を過ぎて電話することを遠慮するかもしれません。自分は「ゆりかご」を卒業した身だからです。
でも、この一言があるだけで、本当に困った時に頼れる先がある、それだけでお守りになると感じました。

「いつでも電話してきてね」
この一言はきっと“心のお守り”として、ママたちの心の支えとなっています。

 

 

■利用したママからの手紙

卒業したママたちからは、たくさんの手紙が寄せられています。その一部を特別に見せていただきました。ここでは一部をご紹介します。

 

「頼れる人もおらず、心身を削り気を病みそうな毎日の中、ほぼ毎日お世話になりました。最近では二人目の子どもを持つことも前向きに考えられるようになり、また命を授かることができたら必ずまた皆さんに会いに行きたいです。」

 

「人を頼ることが苦手で不安でしたが、とても親切に相談に乗ってもらい、頼る事も大事な事だと学びました。つらい時も、すぐに来なさいと言ってもらえて支えでした。二人目ができたらまたすぐに通います。それまで皆さんフルメンバーでいてくださいね!」

 

手紙には感謝の気持ちとこの1年の思い出が綴られ、その文字からは親としての自信が感じられました。

 

「ゆりかご」の取材を通して、スタッフ皆さんの温かい想いに触れました。
「支えたい」気持ちが強いからこそ、ママも安心して頼ることができるのだと思います。

産後の言葉にならない気持ち、筆者も経験していますが、この場所がそんな不安を感じるママたちにとっての救いとなっています。

 

 

【編集後記】
「ゆりかご」は、ボランティアスタッフによって支えられ、寄付金で運営されています。
このような心のこもった場所を無料で利用できることに、筆者は驚きと感動を覚えました。
スタッフの皆さんは、お母さんたちの声に耳を傾け、心から寄り添っています。
それは、たくさんのファンレターが証明しています。
絶妙な距離感と居心地の良さ、そして人間味あふれるスタッフの温かさ。
まるでパワースポットのような空間でした。
筆者も、子どもが1歳までの間に、ここに来てみたかった・・・!

 

 

産前産後ケア ゆりかご

【所在地】新潟県新発田市本町3-3-4(フードバンクしばた隣)
【連絡先】専用ダイヤル:070-4498-4325
【開放日】毎週月・水曜日/第1・3金曜日
【利用時間】10:00~15:00
【駐車場】有

一覧へ戻る