はなえむのもり

いくとぴあ食花(新潟市中央区清五郎)内にある「新潟市こども創造センター」にお邪魔してきました。
子どもたちが自ら考え、他者と繋がりながら育っていく。そんな“生きる力”を育む、新潟の創造拠点です。

永井高志センター長

永井高志センター長

新潟県内の小学校で教員・校長を歴任し、定年退職後はセンター長として地域教育に携わる。

ゼロから築いた虹の拠点、まだ道の途中

 
「こども創造センター」を含む「いくとぴあ食花」は平成25年5月に開館しました。

「いくとぴあ食花」は主に以下の3施設で構成されています:

・こども創造センター

・食育・花育センター

・動物ふれあいセンター

新潟市が建設・主管を行い、各施設は異なる事業者がJV(ジョイントベンチャー)を組んで運営しています。

 

設立当初、新潟市ではこのような大きな施設はなく、具体的な運営・管理方法について参考になるモデルもほとんどなかったため、職員皆で時間をかけて試行錯誤しながら現在のような形にしてきたそうです。

建物はキッズデザイン賞も受賞しており、そのコンセプトは「虹」

外観の色とりどりのカラーはそれを表現しています。

 

この施設のコンセプトは

「未来を担う子どもたちが、人との交流や創作活動・体験活動を通して、自分で考え行動していくための「自ら生きる力」を伸ばし、他者と協調しながら「共に生きる力」を育む為の機会と場所を提供する拠点施設」

とのことでした。

永井センター長は、来館者同士の交流が学びにつながることを重視しており、遊びや創作活動を通じて「生き方の指針」を得る場としての役割を語ってくれました。

 

 

永井センター長
永井センター長
来られた方同士、いろいろな情報交流を通して学びとして帰ってもらう。

様々な遊びや、何かを作ったり、知らない人との関わり、

例えば会話しているだけでも、この人ってこういう特技があって、こういう考え方をしてるんだというようなね。

教科書による勉強ではなくて、個人としてどう生きていくか、生き方の指針のような学びですよね。

ーー なるほど。教育施設という位置づけが大きいのですね。

永井センター長
永井センター長
はい。まだ小さい子にはちょっと難しいですけど、それでも小学生くらいになれば、そうした関わりの中から、ある程度の学びが生まれると思います。

ーー ゼロからのスタートということでしたが

永井センター長
永井センター長
設立当初、具体的な運営についてのサンプルになるようなものが少なかったんですね。

当時のスタッフは試行錯誤をして、現在のようなシステムを作っていきました。

ただ、私としては現在の体制が完成形だとは思っていません。

まだこれからも伸びしろは十分にあると思っています。

 

 

体験が学びに変わる場所~サポーターと共につくる未来

 
こども創造センターでは「サポーター制度」があります。

これは、事前にサポーターとして登録を受けた方だけがイベントやワークショップを開催できるというもので、営利目的であったり、センターの趣旨と合致しない活動を防ぐ目的があります。センターの想いと共鳴するサポーターによってボランティアのような形で運営されているこういったイベントは大変好評で、子どもたちの“学び”につながっています。

 

永井センター長
永井センター長
何かをするということは“学び”です。

例えばミュージックプログラム。プロの演奏家が生で楽器を演奏するイベントがあります。小さなお子さんでも大きな音楽ホールではなく、こんなに身近で本物の音楽を聴く体験ができます。

ーー 小さな子を連れて音楽ホールに行くのはハードルが高いですからありがたいです。

永井センター長
永井センター長
私自身、こうしなきゃいけないというような概念を崩して、これもありだよねっていう、枠を取り除いて考えるようにしています。

ーー いろいろな体験ができることは子どもたちにとってかけがえのないものです。

永井センター長
永井センター長
知識として知っていても、果たしてそのままできるのか、

例えば電車に乗ったことがない人は切符の買い方すらわからない、実際自分でお金を入れてみたり、ボタンを押してみないとどうなるかわからないじゃないですか。

経験や体験は「学び」になって、それをもとにまた新たな体験に挑戦できる、そう思っています。

ーー そういう学びは生きる力になりますね。

永井センター長
永井センター長
知識も大事ですが、これからは、「何か起こった時に、じゃあ自分はどうするのか、どう考えるのか」が大切です。今の子どもたちは、「答えのない社会」を生きていくと思うんです。マニュアルがあるわけでもない、ネットで調べてもわからないこともたくさんある、結局は自分で解決していくわけですね。

ここで全部なんていうのは無理ですから、ごく一部で良いと思うんです。何か1つでも経験として持って帰ってもらえたら良いと思っています。

 

 

一期一会~支える側の哲学

 
ーー 運営において心がけていることは?

永井センター長
永井センター長
スタッフは“黒子”のような存在です。来館者と適切な距離感を保って必要に応じてサポートするようにしています。

また、先ほどお伝えしたワークショップなどのイベントには、サポーターの方だけでなく、必ずスタッフがついて、より良い内容になるよう提案を行っています。センターとしてはファシリテーターやコーディネーターとしての役割を担い、自分たちが前に出るのではなく、参加者自身が「やってみたい」と思えるような仕掛けづくりを心がけています。

 

筆者も第一子が0歳の時からこの施設を利用させていただいています。

規模の大きさもさることながら、スタッフとの距離感が適度にあり、空間に自然と溶け込めるような感覚がありました。その規模がゆえ、あらゆる地域の親子が集まる場にもなっています。

 

永井センター長
永井センター長
1回でも出会えることは奇跡だと思うんです。

前任のセンター長がよく「一期一会を大切に」と言っていました。

その瞬間にご縁があって、それがたったの一度だったとしてもその瞬間を大事にすると。

 

 

体験×学び

 
建物内部は、床や遊具等に木をふんだんに取り入れられています。

これは「木育」というもので、木や森とのふれあいを通じて豊かな心を育てる教育概念だそうです。

階や空間によって、世代や活動が分かれているので、安心感もあります。

光と音のホールは、音楽ホールにも負けない音響設備となっているそうです。

 

 

ーー 最後に一言お願いします

永井センター長
永井センター長
どんな斬新なアイデアでも、ただ意識してないだけで多分その人のどこかに何かしらあるんです。

私は「無から有は生まれない」と思っています。

多分何かしらを元にして自分でそこにプラスして新しいものとして出てくるような気がするんですね。

体験は学びであり学びは体験です。

ぜひ来館していろいろなことを体験してほしいです。

 

 

 

【編集後記】

筆者も子どもが生まれてから何度もお世話になっているこども創造センター。

ダイナミックな作りと、たくさんのイベント等で多くの子どもたちに愛されています。

 

筆者おすすめの4階「いこいのひろば」は見晴らしも良く、食事をすることもできます。

たくさん遊んだあとは、ここでお弁当を広げてひと休み。帰り道はお昼寝しながら、のんびり帰宅するのがわが家の定番でした。

休日お弁当屋さんが出店していることもあるそうです!

 

地域の子育て施設での先生方との距離感が近い感じを母性的と表現するならば、こども創造センターは、大きな懐で温かく見守るような父性を感じました。

子どもたちは何をしたって良い。何かやってみたくなるような環境を整えてあげることが大事なんだとセンター長が強い眼差しで語ったことが印象的でした。そんな仕掛けや工夫あふれるこども創造センター、今回取材させて頂きその神髄に触れることができたことに感謝でした。

 

 

 

 

新潟市こども創造センター

【所在地】新潟県新潟市中央区清五郎375番地2

【連絡先】025-281-3715

【利用時間】9:00~17:00(不定休)

【利用料金】入場無料

【駐車場】有

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